(1) アボリジニの人たち

アボリジニと呼ばれるオーストラリアの先住民を知っていますか?彼らは,4万〜5万年前から住んでいたとされています。18世紀にヨーロッパの人びとが移動してきたとき,およそ30万人の人びとがいたといわれています。現在は,半分以上の人は都市に住んでいます。残りの40%の人びとは砂漠などに住んで昔ながらの伝統を守って生活しています。ここでは,砂漠に住んでいるアボリジニの人たちにまとをしぼって話を進めていきます。
 アボリジニの人びとが描く絵を「アボリジニ・アート」とよびます。読む,書くといった文字を持たないアボリジニの人びとにとって,砂漠で生きぬく知恵や神話を絵に描くことは,彼らにとってとても大切なことです。私たちが描く絵とは内容も目的も大きくちがうということをまず知っておいてください。
アボリジニは約4万〜5万年前ごろにオーストラリアにやってきたと考えられています。そのころの海は今よりも100m以上も低く,オーストラリアやニューギニアなどはユーラシア大陸と陸続きでした。そのころ大陸からわたってきた人びとが今のアボリジニの祖先となりました。
 アボリジニの人びとは,狩りや植物を集めることで生活しています。カンガルーやトカゲなどをつかまえて食べたり,ブッシュバナナやブッシュトマトといった植物を集めて食べています。狩りに使う道具もいろいろですが,中でも有名なのがブーメランでしょう。
 また,ディデュリデューという大地をゆるがすような低い音を出す楽器をよく演奏します。ただし,この楽器は男性しかふくことが許されていません。

(2)ドリーミングや聖地
文字の文化を持たないアボリジニの人びとは,くらしの知恵や狩りのしかたや神話などを歌やおどり,そしてアートして伝しょうしてきました。それらを「ドリーミング」とよびます。そして,今日では彼らの伝たつ手だんはアボリジニ・アートとよばれ,オーストラリアを代表する芸術文化として評価されています。
(3)アボリジニ・アート
アボリジニには彼らの言葉があります。英語とはまったくちがった言葉を使います。そしてその言葉は、それぞれの部族でちがっています。言葉はありますが文字はありません。だから、アボリジニの人びとは、生活する知恵や神話を絵に描きます。その絵がアボリジニ・アートとよばれるものです。
 彼らは、元々地面や自分の体などに絵を描いていました。30年ほど前から今のようにキャンバスに描くようになりました。つまり、地面に描かれているうちは、描いたらすぐに消えてしまうため、私たちが目にすることもなかったというわけです。
 また、アボリジナルアートは、アートとはいえ自分たちで想像したものを描くのではなく、地図であったり暗号であったり決まり事を描いたりしています。そしてそれは、自分が描けるものが決まっていて、勝手に自分で変更することはできません。また、そこに描かれている記号の意味や物語の内容などは部族以外の人には教えられないことになっています。

《調べてみよう,やってみよう》
 1.アボリジニ・アートの記号の意味
 2.アボリジニの人びとの生活(食べ物,家,仕事)
 3.アボリジニアートの描き方(点描)
 4.アボリジニアートを描いてみよう